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「麺屋こころ」開業ストーリー

Story04 取材後記「こころの執筆を終えて」

フードサービスジャーナリスト 千葉哲幸

私はこの度、「麵屋こころ」代表の石川琢磨氏、FCオーナーの坂本啓介氏、栗原創一氏の取材・執筆を担当させていただいた者だ。飲食業界の記者を三十数年間生業としている。具体的に言うと、柴田書店という食分野の出版社に1982年新卒で入社して、5年後の1987年に『月刊食堂』という雑誌編集部に配属になり、1993年に縁があってこのライバル誌の『飲食店経営』(当時の版元は商業界)に移り、編集長を10年やって、会社を辞めて……という具合に脱サラして、現在はフードサービスジャーナリストを名乗っている。

 

今回の取材を終えての率直な印象を述べると、「こころのつながり」を感じた。「麵屋こころ」の記事として取り繕っているわけでない。取材はFCオーナーからはじまり、代表の石川氏が最後となったのだが、これらの発言が「こころ」で一本筋が通っていた。

KFCの仕組みに倣って続々とFCチェーンが誕生したが……

FCとはある人がつくって成功したアイデアをお金で買って自分で行うことだ。自分で一から始めて儲かるようになるまでは時間がかかる。そもそも成功するかどうかは分からない。だから他人様の成功をお金で買うのだ。

 

日本にFCの仕組みを紹介されたのは、1970年に開催された日本万国博覧会でのこと。ここに「ケンタッキー・フライド・チキン」(KFC)が出展して披露したものが飲食業のFCだ。それを体験したたくさんのお客は、未来からやってきたようなスマートな店舗デザインと、日本の唐揚げと似て非なるフライドチキンというおいしい食べ物に大いに感動した。そして事業家たちは、他の店にはない効率的な店舗空間と、クオリティの高い同じ食味の食べ物が提供できるという仕組みに驚愕しつつ、それを取り入れて儲けようと野心をかきたてたものである。

 

 ただし、前置きしておくと、KFCがFCチェーンとして栄えることができた根幹にはオートフライヤーという革命的な調理機器があったからである。もう一つのファストフードの雄であるマクドナルドの場合は、パティを両面焼きで安定して速く焼き上げるクラムシェルグリルが存在している。これらによってチェーン本部とFCオーナーの間には「繁盛の信頼」が築き上げられた。

 

さて、KFCが日本で紹介されて以来、さまざまな飲食業がKFCの仕組みに倣ってFCの導入を図った。ラーメン店業界はその象徴と言える。

 

筆者が『月刊食堂』に配属されたばかり、30歳を目前にしたころだが、取材相手の発言に不思議な思いをしたことがある。それは「私は昔、ラーメンの看板屋をやってまして……」と、自分をさげすむような言い方をする人がいたこと。このような人からは「飲食業」という人間臭くてちょっとお茶目な雰囲気はまったく感じられなかった。

 

この「ラーメンの看板屋」とは最初何のことか分からなかったが、後に「ラーメン店のFC本部」のことであることが分かった。1970年代から80年代にかけてラーメン店のFC本部は、出来ては消えてを繰り返すという事例が多かった。直営店を持たないでFCを展開する事例もあった。FC本部とFCオーナーをつなぐ頼みの綱は「看板」である。

 

当然、技術を教えるという教育的環境は存在しない。本部とFCオーナーたちとの人間的な交流はない。「儲かった」「だまされた」という話になれば、「だまされた」という事例がはるかに多い世界ではなかったか。

「ファン目線」「リピーター」「顧客対応」

 日本の飲食業が大きく転換したのは、バブル経済崩壊後の1990年代半ばからBSE(狂牛病)騒動が起きて、その後、「食の安全・安心」が叫ばれるようになった2000年の半ばである。これ以降に見られた変化とは、「商売をプロ目線で見るのではなくファン目線で見ること」「客数を追求するのではなく、リピーターを育てること」「標準化するのではなく、顧客対応すること」である。

 

 厨房機器の技術革新も著しく進化した。オートフライヤーやクラムシェルグリルのようなFCの根幹となる厨房機器は、すでに厨房機器メーカーがつくり上げている。では、これからのFC本部とFCオーナーの関係性に求められていることは、どのようなものだろうか。

 

「麵屋こころ」のFCオーナーたちはみな、同店の看板商品「台湾まぜそば」をはじめて食べた時に衝撃を覚えたという。そして、代表の石川氏を人間的にリスペクトしている。FCオーナーの店に食べにくるお客も台湾まぜそばに衝撃を覚えている。トッピングや調味料によってカスタマイズできるようになっている。だから、お客は「今回は、こんな感じで食べてみよう」と「麵屋こころ」の商品を楽しみにやって来る。

 

「麵屋こころ」には今日の飲食業の三つの条件「ファン目線」「リピーター」「顧客対応」が備わっている。そして代表、石川氏の人間性によってFCオーナーたちは結び付いている。「麵屋こころ」は宇宙のように広い飲食業の中ではほんの小さな世界であるが、石川氏が述べる「人生を楽しもう」という世界観がFCオーナーたちに共有されている限り、来店するお客には幸せの体験をもたらし続けていくことであろう。

フードサービスジャーナリスト 千葉哲幸

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